鉄道貨物の輸送障害で代替輸送の検討会発足、荷主などからヒアリング 国交省
国土交通省は、環境対策や労働力不足対策の観点からモーダルシフトの受け皿として重要性が高まる鉄道貨物について、輸送障害時の代替輸送に関する課題抽出や解決方策を検討するため「モーダルシフト促進のための貨物鉄道の輸送障害時の代替輸送に係る諸課題に関する検討会」を設置。2月25日に東京都千代田区の同省で第1回会合を開き、JR貨物と荷主3社から輸送障害時の対応などについてヒアリングを行った。
鉄道による貨物輸送は、トラックに比べトンキロ当たりのCO2排出量が少なく環境対策として有効なことに加え、大量輸送により近年深刻化するトラックドライバー不足対策の“切り札”として期待が高まっている。一方、自然災害や事故などで路線が不通となる輸送障害時には、荷扱い可能な駅以外でコンテナを取り降ろせないことや代替輸送のトラックの手配が困難であることなどが、荷主の鉄道へのモーダルシフトを妨げる大きな要因となっている。
特に、昨年10月に台風の影響で鉄道貨物の約半数が通過する東海道線静岡県内区間が11日間にわたり不通となった際には、積極的にモーダルシフトを進めていた荷主企業が代替輸送のトラック確保に苦労するなど、輸送障害時の鉄道貨物輸送の弱点が浮き彫りになった。こうした状況を踏まえ、6月までに計4回の会合を開き、輸送障害時の代替輸送での課題点を荷主からのヒアリングなどを通じて吸い上げるとともに、関係者間のルール作りや行政による支援のあり方などを検討することを決めたもの。
委員は、杉山武彦成城大教授を座長に、全国通運連盟、全国通運、JR貨物、ヤマト運輸、佐川急便、日本通運など物流企業関係者のほか、味の素、パナソニック、トヨタ自動車、住友化学など荷主企業関係者や学識経験者らで構成。
第1回会合ではまず、国交省の担当官が鉄道モーダルシフトについての現状や輸送障害時に関する問題意識について説明。トンキロベースでは、鉄道の輸送分担率は約5%前後で推移しているものの、輸送距離500キロメートル以上では2003年の7.7%から07年には10.2%に向上するなど、荷主の環境意識向上や行政による支援の効果が表れている。また、物流事業者ではトレーラ確保が困難になっていることにより海上コンテナの鉄道による国内輸送への関心が高まっていることなどが紹介された。
一方で、13、14年度の輸送障害時の代行輸送リカバリー率は約14%にとどまっており、物流事業者に対して行ったアンケートでも「災害に弱く、輸送の確実性に不安がある」「輸送状況に関する情報が入手しにくい」「災害時に他モードの確保を行わなければならない不安がある」などの意見が上位を占めた。
荷主からの要望は多岐に
JR貨物からは玉木良知総括執行役員がトラック代行輸送を想定して大型コンテナの通行許可申請をあらかじめ行うよう利用運送事業者に働きかけを行っていることなどを説明するとともに、土砂崩れなどのリスクが分かっている場所については、行政の砂防・道路関係部署などとの連携により予防措置を行う必要があると訴えた。
荷主からは、住友化学、トヨタ自動車、パナソニックの各担当者が説明を行い、住友化学の藤永剛史物流部長は、デリケートな温度管理が必要な化学製品が鉄道輸送中に運行中止などになった場合には、できるだけ早くコンテナを取り降ろさなければ製品劣化が発生しかねないとして、最寄り駅での代行トラックへの積み替えが円滑に行えるように要望した。
トヨタ自動車の熊沢洋一生産部品物流部部長は、名古屋~盛岡間で専用列車「トヨタ号」を使って輸送を行っているが、輸送障害時には大型車の通行許可申請の関係から通常の31フィートコンテナに代えて10トントラックで代行輸送を行ったことなどを紹介。その上で、JR貨物は輸送障害時には12フィートコンテナを使ってでも鉄道で輸送する体制を構築すべきとした。
パナソニックの金城佐和子モノづくり本部物流強化グループ企画チーム主幹は、列車発車後以外の代替トラック確保によるコストアップ分は荷主が負担していることなど問題点を指摘したほか、31フィートコンテナの不足が発生しないよう“輸送インフラ”の整備を要望した。
次回検討会は、4月13日に開催し、ヤマト運輸、佐川急便、日本通運などからヒアリングを行う予定。