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2015年1月26日付 2550号

「信書リスク」回避でクロネコメール便廃止、4月から代替新商品  ヤマト運輸

会見する山内社長

 ヤマト運輸(山内雅喜社長)は22日、「信書リスク」を回避するため、今年3月31日受付分をもってクロネコメール便を廃止することと、4月から3種類の代替新サービスを開始することを発表した。

 クロネコメール便は、1997年度に法人顧客を対象として全国販売を開始、2004年度には対象を個人顧客にも拡大した。この間取扱冊数は順調に増加し、ピークとなる10年度には23億冊、売上高1479億円を記録した。反面、基準があいまいな上に罰則まで設けられている信書との争いは絶えず、09年7月以降に郵便法違反容疑で、利用者が警察から事情聴取を受けるなどの事例が発生。信書便が含まれていないかを確認する、荷受の厳格化を進めたことなどにより、11年度以降は冊数も減少に転じ、直近の13年度は約21億冊、1260億円の規模にとどまった。

 ヤマト運輸では当初、判断が難しい信書概念の撤廃を主張していたが、利用者が意図せず検挙されるという「信書リスク」を重く受け止め、信書便事業の活性化方策を探ることを目的とした、13年12月の総務省情報通信審議会郵政政策部会において、諸外国の例も引用しながら「信書制度を残しつつ誰でも信書か否かの判断ができるよう『外形基準』を導入すべき」と主張を後退させた。

 同部会はこうした主張を認めず、信書リスクが放置されたままとなっていたことから、ヤマト運輸では「お客さまにとっての『安全で安心なサービスの利用環境』と『利便性』を当社の努力だけで持続的に両立することは困難である」と判断、サービスの廃止を決めたもの。

 4月1日から開始する予定の新サービス=概要下表参照=では、「信書リスク」を最小限に抑えるため、現在のメール便の代替として紙媒体のカタログ等を運ぶ「クロネコDM便」は、原則法人のみが利用可能で、個人の利用は不可能となる。一方で、宅急便のメニューに最小の60サイズを下回る、小さな荷物を対象とした2種類のサービスを追加。現在個人間のメール便利用で主流となっている、オークション等でやり取りされる物品ならば、個人でもメール便的な利用が可能になる仕組みを設け、経営への影響を抑えている。さらに、現状メール便を利用している法人顧客については、現行と同一条件で「クロネコDM便」へ移行する。

 なお、新サービスについては、後日詳細を発表する。また、現在メール便を配達している約4万7千人の「クロネコメイト」については、引き続き新サービスの「クロネコDM便」の配達業務に従事し、廃止に伴う契約解除は行わない考え。

 同日記者会見した山内社長は、廃止に至った経緯などを説明するとともに、あらためて社会の利便性向上を追求するためには、規制緩和によって事業者が公平公正な競争を行える市場環境を整備することが必要であると述べ、今後も引き続き信書規制の改革を訴えていく姿勢を強調した。また、今回発表した新サービスは市場ニーズを慎重に検討した上で開発したものであるとし、経営へのマイナス影響は避けられるとの考えを示した。一方で、個人発のメール便輸送が不可能になることについては「大変申し訳なく、残念に思う」と語った。

引越事業者優良認定制度の「お客様対応責任者研修会議」開く  全ト協

全ト協ホールで開催された「お客様対応責任者研修会議」

 引越最繁忙期を前に全日本トラック協会は23日、東京都新宿区の全日本トラック総合会館全ト協ホールで引越事業者優良認定制度「お客様対応責任者研修会議」を開催した。消費者からの苦情やトラブル等に対応するため、認定事業者(グループ)が配置する「お客様対応責任者」に消費者対応の基本的な知識や引越優良事業者としての心構えなど習得してもらい、優良事業者にふさわしい対応を行ってもらうことを目的として、年1回の参加を義務づけているもの。これら各社の責任者が、同制度が消費者に信頼、認知され、今後普及・浸透していくための重要なカギを握るものといえるだろう。

 この日は約50人の「お客様対応責任者」が参加。冒頭あいさつした鈴木部会長は、同制度は安全安心の事業者の見える化、引越業界全体のコンプライアンスの向上、苦情・トラブルの防止を狙いとするものであるとし、この中で一番難しいのが苦情・トラブル防止であり、一般消費者に対応する責任者を置き、責任の明確化を図ることとしたものであるとして、お客から苦情または相談があったときに正面から正しく対応できる体制をとってほしいと要請した。そして車や社内に安心マークを張ってもらい、一人でも多くの一般消費者に認知、理解してもらえるよう活動し、引越優良事業所を育てていってほしいと述べた。

 この後、研修に入り、「お客様対応の基本的な知識・心構え等について」消費者関連専門家会議の松岡信行氏が講話。次いで、「引越優良事業者に係る注意事項等について」全ト協の礎司郎輸送事業部長らが講話した。

 「お客様対応責任者研修会議」は21日の四国を皮切りに、2月16日の関東(2回目)まで全国10ヵ所で開催し、認定事業者が登録している全「お客様対応責任者」が参加することになる。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(31)
    ☆四文字『フェリーに注目「利用運送」』
    ☆道『米ドルとオイルショック、車社会』(19)
    ☆物流業界の新年会

  • ☆日貨協連が理事会、改正組合法への対応など承認
    ☆物流連が初の合同セミナー、大学生520人が出席
    ☆日通、プライスダウンの引越キャンペーン展開
    ☆関東運輸局・エコモ財団、第2回「グリーン経営セミナー」開く
    ☆国交省、国内コンテナ積載セミトレーラで駆動軸重制限を緩和
    ☆国交省、新たな国土形成計画中間整理に輸送網効率化など盛り込む
    ☆西濃運輸野球部・空手道部が初練習、野球部は都市対抗の連覇目指す
    ☆交通労連が中央委員会、賃上げ要求1万円超「今春闘は反転攻勢」
    ☆ヤマト運輸労組が春闘討論集会、物流の価値を社会認識とするための取り組みを会社が二要請
    ☆東京団地冷蔵、平和島施設の全面建て替えへ
    ☆警察庁、準中型免許新設など盛り込んだ道交法改正試案で意見募集
    ☆国交省、トラックの車線逸脱警報装置17年度以降順次義務化へ
    ☆国交省貨物課長が準中型免許の早期施行を要請
    ☆ヤマト運輸新社長に長尾ヤマト運輸常務執行役員を内定

今週のユソー編集室

  • ▼1995年1月17日未明に発生した阪神・淡路大震災から、20年が経過した。関連死まで含め7千人以上が亡くなった大災害、この20年間で、われわれはどれほどの災害対応力を身に付けたのだろう。
    ▼震災後、消防等のレスキュー体制が強化されたことや、高速道路高架橋の補強が行われたことなど、確かに進歩した点はあった。だが、災害時物流という点で見ると、まだまだ勉強不足であった現実が、東日本大震災で突き付けられた。
    ▼あるトラック運送事業の経営者は「東日本大震災で、あれほど物流の重要性が指摘されたのに、復興計画に物流関係者が呼ばれなかった都市がある」と嘆く。災害は常に想定外で、人は常に忘れやすい、最大の教訓は、おそらくそうした点にある。
    ▼近年頻発する火山など、「日本列島が活動期に入ったのではないか」とする見方もある。過去の災害の苦い経験を忘れず、災害に強い物流を構築し、被害を最小限にとどめたい。

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