「信書リスク」回避でクロネコメール便廃止、4月から代替新商品 ヤマト運輸
ヤマト運輸(山内雅喜社長)は22日、「信書リスク」を回避するため、今年3月31日受付分をもってクロネコメール便を廃止することと、4月から3種類の代替新サービスを開始することを発表した。
クロネコメール便は、1997年度に法人顧客を対象として全国販売を開始、2004年度には対象を個人顧客にも拡大した。この間取扱冊数は順調に増加し、ピークとなる10年度には23億冊、売上高1479億円を記録した。反面、基準があいまいな上に罰則まで設けられている信書との争いは絶えず、09年7月以降に郵便法違反容疑で、利用者が警察から事情聴取を受けるなどの事例が発生。信書便が含まれていないかを確認する、荷受の厳格化を進めたことなどにより、11年度以降は冊数も減少に転じ、直近の13年度は約21億冊、1260億円の規模にとどまった。
ヤマト運輸では当初、判断が難しい信書概念の撤廃を主張していたが、利用者が意図せず検挙されるという「信書リスク」を重く受け止め、信書便事業の活性化方策を探ることを目的とした、13年12月の総務省情報通信審議会郵政政策部会において、諸外国の例も引用しながら「信書制度を残しつつ誰でも信書か否かの判断ができるよう『外形基準』を導入すべき」と主張を後退させた。
同部会はこうした主張を認めず、信書リスクが放置されたままとなっていたことから、ヤマト運輸では「お客さまにとっての『安全で安心なサービスの利用環境』と『利便性』を当社の努力だけで持続的に両立することは困難である」と判断、サービスの廃止を決めたもの。
4月1日から開始する予定の新サービス=概要下表参照=では、「信書リスク」を最小限に抑えるため、現在のメール便の代替として紙媒体のカタログ等を運ぶ「クロネコDM便」は、原則法人のみが利用可能で、個人の利用は不可能となる。一方で、宅急便のメニューに最小の60サイズを下回る、小さな荷物を対象とした2種類のサービスを追加。現在個人間のメール便利用で主流となっている、オークション等でやり取りされる物品ならば、個人でもメール便的な利用が可能になる仕組みを設け、経営への影響を抑えている。さらに、現状メール便を利用している法人顧客については、現行と同一条件で「クロネコDM便」へ移行する。
なお、新サービスについては、後日詳細を発表する。また、現在メール便を配達している約4万7千人の「クロネコメイト」については、引き続き新サービスの「クロネコDM便」の配達業務に従事し、廃止に伴う契約解除は行わない考え。
同日記者会見した山内社長は、廃止に至った経緯などを説明するとともに、あらためて社会の利便性向上を追求するためには、規制緩和によって事業者が公平公正な競争を行える市場環境を整備することが必要であると述べ、今後も引き続き信書規制の改革を訴えていく姿勢を強調した。また、今回発表した新サービスは市場ニーズを慎重に検討した上で開発したものであるとし、経営へのマイナス影響は避けられるとの考えを示した。一方で、個人発のメール便輸送が不可能になることについては「大変申し訳なく、残念に思う」と語った。