物流KPIの導入促進に向けて検討会を立ち上げ 国交省
物流業でのKPI導入を促進―。
国土交通省は、メーカーなど荷主サイドで導入が進んでいるKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)の物流業での導入促進を図るため、「物流事業者におけるKPI導入のあり方に関する検討会」を設置。11月27日に東京都千代田区の霞が関ビルで第1回会合を開き、物流業ではメーカーなどに比べKPI導入が遅れている現状を報告するとともに、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)会員の物流事業者400社を対象にKPI活用実態に関するアンケート調査を実施することを決めた。
KPIは、コストや品質、組織などの管理・業務プロセスを「見える化」し、「コミュニケーション」を通じて組織内に共通認識を醸成、「評価」によって担当者に解決を促して業務改善などにつなげる手法に用いる指標で、荷主企業などでは一般化しつつある。
JILSが会員を対象に行ったKPI導入に関する調査では、荷主では約8割が導入しているが、物流事業者を含む物流コスト研究会参加企業では5割を下回っている。一方で、荷主の8割弱がアウトソーシング先にKPIなどを用いた定量的な管理運営や報告を望んでおり、物流事業者は自社の業務改善のみならず、荷主ニーズへの対応の観点からもKPI導入を検討する場面が今後増加することが予想される。
こうした状況に対し、物流事業者のKPI導入に向けた実態把握や課題抽出、それらを踏まえたパンフレット作成などを目的に検討会を立ち上げたもので、委員は、林克彦流通経済大教授を座長に、荷主企業や物流企業担当者、学識経験者などで構成されている。
物流業でのKPIの『利用目的』では①物流事業者の経営改善②自社のオペレーション改善③荷主への報告など企業間連携④社会的観点での評価―を例に挙げ『評価の視点』では、「財務」「コスト・価格」「品質・サービスレベル」「人材・学習」「技術・革新性」「安全・リスク対策」「環境」「企業間連携」を例として示している。これらの『利用目的』と『評価の視点』を組み合わせた範囲でKPI設定を行うことを想定するが、詳細な指標などについての設定は各事業者が行うこととし、検討会では概念の整理を行うにとどめる。
検討を進めるに当たって、JILS会員の物流事業者にKPIの導入状況や活用に当たっての課題点、導入しない理由などについてのアンケートを来年1月に実施する予定。
第1回会合では、「物流事業者がKPIを導入することで、荷主と“共通言語”を持つことができる」などの意見が出る一方、「荷主が使い方を間違えると、物流事業者を“切る”材料になりかねない」と懸念を示す意見も出された。検討会は、年明けに第2回会合を開き、年度末までに第3回会合を開いて取りまとめを行い、パンフレット作成や講習会での説明などにつなげる方針。なお、来年度以降については、関連予算の要求を行っていないため未定としている。