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2014年11月3日付 2540号

過疎地の物流網維持でNPOの活用検討、来年度モデル事業実施へ  国交省

 国土交通省は過疎地などでの物流ネットワーク維持や宅配便を活用した生活支援サービスのあり方などを検討するため「地域を支える持続可能な物流システムのあり方に関する検討会」を設置。10月29日に東京都千代田区の同省で第1回会合を開き、過疎地での物流サービスの現状報告などを行うとともに、来年度予算概算要求に盛り込んだ物流事業者とNPOの協働による宅配・集荷などのモデル事業についての役割分担のイメージを示した。

 検討会は、過疎化により貨物の集配効率が低下する一方、クール便や時間指定など物流事業者の負担が増加する状況下で今後も物流ネットワークを維持・効率化するための方策を検討するとともに、宅配ネットワークを活用した買い物支援や“見守り”などの生活支援サービスの課題などについて議論する。また、NPOなど、新たな宅配・生活支援の担い手によるサービス提供に関しての課題点についても話し合う。

 委員は、野尻俊明流通経済大教授を座長に、大庭靖雄日本物流団体連合会理事長、關祥之日本郵便物流法人営業部長、中西洋丈佐川急便営業部営業課長、福田靖ヤマト運輸構造改革部長ら物流関係者のほか、学識経験者や吉田満青森県西津軽郡深浦町長などで構成。

 第1回会合では、事務局が、地方では高齢化や過疎化が急速に進行していることを説明した上で、宅配便は通販市場の拡大などにより取扱個数が増加する一方で、過疎地では集配効率が低下していると報告。ある物流事業者では荷物1個当たりのトラック走行距離が都市部の約0.2キロメートルに対し、過疎地では約1.2キロメートルと約6倍を要していることなどを説明した。また、過疎地ではいわゆる“買い物弱者”や“孤立死”が増え、買い物支援や見守りサービスが求められているとした。

 さらに、NPOが買い物支援や高齢者の見守り、農産物の販売支援などを行っている例があるとして四つの事例を紹介し、「NPOは近年急速に増加しており、今後の着実な増加が期待されている。地方自治体やNPOなど地域コミュニティーとの連携により、効率的で地域ニーズに即した生活支援・宅配サービスの提供が可能になるのではないか」とした。

 また、愛媛県内子町で昨年行われたバスによる農産品出荷の実証実験やヤマト運輸が高知県大豊町と連携して行っている見守りを兼ねた買い物支援サービスについても紹介。内子町では、週に数日運行しているデマンドバスに住民の農作物を載せる「貨客混載」の実験を行い、実験後のアンケートで出荷者の9割から「今後利用したい」、旅客利用者の64%から「運用上問題ない」との回答を得た。

自治体ではノウハウが不足

 国交省が9~10月に全国の市町村に行ったアンケート(回答1019市町村)では、「既存の宅配サービスに付加して現在取り組んでいる戸別訪問型サービス」の質問に対し、「高齢者の見守り」(326市町村)の回答が最も多く、以下、「給食サービス」(184市町村)、「買い物支援」(167市町村)などの順となっている。また、今後取り組みたいサービスは、「買い物支援」が298市町村で最も多く、以下、「高齢者の見守り」(239市町村)、「バス、タクシー、NPO運送の活用」(144市町村)などの順。

 さらに、取り組むに当たっての課題点については、「行政機関のノウハウ不足」(359市町村)、「地域の人材不足」(336市町村)、「行政機関の資金不足」(315市町村)などとなっている。

 来年度、経産省と連携で予算要求している「小さな拠点」(地域の活動拠点)のモデル事業では、域外からの貨物や域内商店の商品を小さな拠点に集め、物流事業者とNPOの協働による宅配・集荷を行い、NPOに求められる輸送、荷扱い品質などの能力や関係者の役割分担などについて検討を行う。検討会は今後、年内に第2回会合を開き、小さな拠点の構築による物流体系整備や貨客混載のあり方について話し合うとともに、青森県深浦町での集配共同化や他のサービスとの複合化などに関するケーススタディについて報告する。

 なお、交通政策審議会自動車行政小委員会でも「貨客混載」についての議論が開始されたが、地域を支える持続可能な物流システムのあり方検討会では、トラックへの旅客混乗については議論の対象としない方針。
 その後、年明けに第3回会合を開き、取りまとめの骨子案を提示、年度末に取りまとめを行う。

トラック積合せ運賃9.7%値上げ  日本通運

 日本通運(渡邉健二社長)は1日、一般貨物自動車運送事業の積合せ届出運賃と運賃料金適用方を改定した。国土交通省には4日に届出を行う予定。改定率は運賃9.7%値上げ。適用範囲は全国、適用貨物は全ての貨物。運賃料金適用方は、輸送距離の計算について、着地を「最寄の営業所」から「貨物の着地」に改定した。実費負担について、「館内配送料」「離島への配送料」を新設した。

 1990年に、貨物自動車運送に関わる各種法改正に基づき、旧運輸省が同年に認可した運賃・料金と同内容をもって「積合せ届出運賃」として届け出、その後適宜改定を実施し、改定前は11年に届け出した運賃を適用していた。同社では9月に貸切運賃(20%値上げ)と燃料サーチャージの改定を行っている。

 今回の改定理由について同社では、「労働力人口の減少による人手不足の顕在化など、さまざまなコストアップ要因が発生し、物流業界を取り巻く経営環境はますます厳しい状況になっている」とし、「従来にも増して安定的かつ良質な物流サービスを提供するため、このたび積合せ届出運賃および運賃料金適用方を改定することとした」とコメントしている。

 また、積合せ届出運賃の改定を機に、引き続き強みとするグローバルネットワークと鉄道、航空、海上輸送等のあらゆる輸送モードを活用した効率的な輸配送、保管、流通加工など一貫したロジスティクスサービスで物流ニーズに応え、トータルの物流コストの削減を実現していくとしている。

今週掲載トピック一覧

  • ☆物流にとってアベノミクス『吉』か『凶』か(28)
    ☆人物ウィークリー、ヤマトシステム開発・星野芳彦代表取締役社長

  • ☆田端国交省自動車局長が会見、下請け・荷主適正取引推進でガイドライン改定へ
    ☆全ト協、新免許で警察庁に速やかな法案作成など要望
    ☆エコモ財団、グリーン経営認証研修会開催
    ☆日本郵便が福山通運から受託、東京23区個人宛て宅配便をゆうパックで配送
    ☆澁澤倉庫、ベトナム大手物流企業の株式35.1%取得
    ☆センコー、私募リート組成の資産運用会社を設立
    ☆ヤマト運輸とヤマト運輸労組が全国安全大会、総合優勝に中国支社
    ☆全運研、「旧暫定税率と人」テーマに全国集会
    ☆全ト協が第46回全国ドラコン、内閣総理大臣賞はバンテックセントラルの四手井さん
    ☆東ト協、クリーン・エコプロジェクトが経産大臣賞を受賞
    ☆東ト協連の運賃動向アンケート、荷主との交渉で値上げ5割超に
    ☆国交省、エコドライブ総合プログラムで10日からに第2次公募開始
    ☆佐川急便、東京都心で物流コーディネート業務受託
    ☆全流協、女性ドライバーの働く環境を考えるプロジェクト発足
    ☆SGHD、宅配単価19円上昇も増税等で取扱個数減少
    ☆丸運・市原社長が会見、M&Aや京浜地区の新倉庫など投資に前向き姿勢
    ☆日立物流・中谷社長が会見、国内事業の構造改革で地域軸の運営体制へ
    ☆SGHD、町田新社長を内定
    ☆14年秋の叙勲、大和・元合通会長に旭中章
    ☆通運連盟が労働力不足問題でシンポ開催、今後複数年開催へ
    ☆千葉ト協が理事会、適正運賃確保等の課題や施設アンケート調査
    ☆日通東京輸送協組が通常総会、村上理事長を再任
    ☆各社の第2四半期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼全日本トラック協会が主催する全国トラックドライバー・コンテスト。先週行われた本年度の大会では、昨今の流れを象徴しているかのように、女性選手が選手宣誓を務めた。
    ▼同時期に開催されたヤマト運輸のドライバーコンテストでは、電動アシスト自転車部門が新設され、出場する女性選手が増えた。同社では今後も主婦を中心に、集配業務での女性登用を拡大していく構えでいる。
    ▼通運連盟の労働力不足に関するシンポジウムに出席した国土交通省の羽尾物流審議官は、女性の物流業界への就労促進に関連して、「女性用トイレや更衣室の整備は、もはや当たり前の話」と発言した。
    ▼物流業界が女性に熱い目を向けている今、羽尾審議官の発言に深くうなずかざるを得ない。労働力不足に悩んでいるのは物流業界だけではなく、女性登用拡大を図る業界は多い。女性をめぐる雇用競争に敗れれば、今度こそ外国人の登用に頼るしかない状況に追い込まれる。

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