国交省の15年度予算概算要求、物流・自動車分野での労働力不足対策盛り込む
国土交通省は8月27日、2015年度予算概算要求の内容を公表。自動車局や総合政策局では、物流業界で深刻化する労働力不足に対応するため、先駆的モデル事業の実施や解決策の検討などに関する要求を新たに盛り込んでいる。国土交通省関係の概算要求は一般会計で6兆6870億円となっており前年度比16%増。このうち、「新しい日本のための優先課題推進枠」は1兆4181億円。
自動車局では、優先課題推進枠を活用し、「自動車運送事業等における人材の確保・育成に向けた取り組みの推進」で新規に1億5千万円を要求。「女性・若年者雇用の先駆的モデル事業等」「ITを活用した中継輸送実証実験」「整備業での外国人技能実習制度に係るマニュアル作成等」を3本柱に、人流・物流のネットワーク確保に努める。
「女性・若年者雇用の先駆的モデル事業等」では、モデルケースの創出のほか、ガイドライン作成やシンポジウムを通じた普及啓発などを実施。
「ITを活用した中継輸送実証実験」では、複数人で1つの運送を分担し、不規則・長時間労働の解消につなげるとともに、女性向けの短時間勤務などを可能とするための実験を行う。
このほか、優先課題推進枠を活用して、「地域のグリーン化を通じた電気自動車の加速度的普及促進」で5億円を要求。電気トラックの場合、車体本体と充電施設の導入費用の3分の1を補助する。
ドラレコ補助などを行う「自動車運送事業の安全総合対策事業(事故防止対策支援推進事業)」では、14年度予算額比20%増となる11億700万円を要求し、引き続きトラック事業者などに対しASV(先進安全自動車)やドラレコ、ヘルスケア機器等の導入を後押しする。
また、事業用自動車の安全対策の新メニューとして、「総合安全情報の分析機能強化による事故の未然防止」を、新規に1億1500万円要求。監査情報や事故情報、検査登録情報を分析して、要監視事業者リストの作成や事業者格付け情報の提供などを行い、事故防止の強化を図る。
CNG・ハイブリッドトラックなどの導入支援を行う「環境対応車普及対策」では、14年度予算比で2%減の5億2100万円を要求。
他省庁との連携事業では、経済産業省との連携で、「省エネルギー型ロジスティクス等推進事業費補助金」「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」、環境省との連携で、「物流の低炭素化促進事業」「中小トラックにおける低炭素化推進事業」などを継続案件として要求している。
組織・定員関係では、本省10人、地方運輸局48人の合計58人の増員を要求しており、地方運輸局ではこのうち29人を監査体制強化に充てることとしている。
税制改正要望では、14年度与党税制改正大綱に沿って、自動車税については消費税10%段階で、環境性能課税や技術開発動向などを踏まえ、環境面に優れた事業用自動車への軽減措置などを講じることなどが盛り込まれた。
また、ASVの自動車重量税・取得税の特例措置をトラックでは3.5トン超8トン以下を対象に加えた上で、3年間延長することを求めている。
宅配の再配達削減でも要求
総合政策局のうち、物流審議官が担当する分野では、新規として、「地域物流の新たな仕組みの構築」と「労働力不足対策」を盛り込んだ。これに、継続案件である、「国際物流のシームレス化」を加え、「物流産業イノベーション」として、1億3500万円を要求。
「地域物流の新たな仕組みの構築」では、経済産業省との連携で過疎地などの宅配サービスの維持・改善に役立つ輸送システム構築に向けモデル事業を実施するとともに、農林水産省との連携で、農水産物の輸出促進に向けた調査や資機材の要件に関する検討などを行う。物流産業イノベーションの要求額1億3500万円のうち、過疎地対策に5千万円、農水産物輸出対策に1千万円の配分を想定。
「労働力不足対策」では、物流事業者と求職者の意向把握や就業促進策を検討するほか、長時間待機や事前合意のない荷役作業の要求などの商慣行の実態把握を行うとともに、体力のない女性や高齢者の就業拡大に向けた環境整備を進める。配分想定額は1千万円。
また、宅配便の再配達削減に向け、消費者の属性別の傾向把握などを行う。配分想定額は2千万円。さらに、空コンテナを削減し、ラウンドユース(往復輸送)するための課題検討で1700万円を想定している。
「国際物流のシームレス化」では、物流情報サービスネットワーク「NEAL―NET」のASEAN諸国などへの拡大の検討で1千万円、パレットなど物流機材のリターナブルユース(反復利用)の促進で1800万円を想定している。
物流のグリーン化では、モーダルシフト等推進事業で14年度と同額の3800万円を要求したほか、環境省との連携で設備導入補助を行う。環境省との連携ではこのほか、31フィートコンテナ導入補助、低床貨車の鉄道輸送実験、地域内輸送の共同化促進、異業種間共同輸配送促進に向けた検討などを盛り込んだ。
さらに、倉庫等における省エネ設備・機器導入やCNGトラックへの転換、先進技術を利用した省エネ型自然冷媒機器の普及促進も環境省との連携事業として要求。
災害に強い物流システムの構築では2億2700万円を要求し、広域連携体制の構築や訓練の実施、民間物資拠点に関する位置・設備情報の地理情報システム上への掲載などを行う。
税制改正要望については、物流効率化法認定施設の割増償却、課税標準特例が期限を迎えることから、要件を普通倉庫3千平方メートル以上(現在は1500平方メートル以上)、冷蔵倉庫6千平方メートル以上(同3千平方メートル以上)に引き上げた上で、2年間の延長を求めている。