クール宅急便の品質改善でキャパシティ拡大と総量管理を実施、荷主への要請も ヤマト運輸
ヤマト運輸(山内雅喜社長)は20日、東京・千代田区の大手町ファーストスクエアカンファレンスで記者会見を開き、昨年10月に発生したクール宅急便の品質管理問題への対応策について、現段階までの取り組みと「総量管理システム」の導入など中元繁忙期に向けた対策を説明した。会見には長尾裕常務執行役員、森岡紀之クール宅急便品質管理対策推進室長、田村高志群馬主管支店品質指導長が出席した。
昨年10月の問題発覚以来取り組んできた施策は、①社長直属のクール宅急便品質管理対策推進室を設置②昨年12月から全国に160人の品質指導長を配置③今年2月から早朝作業リーダーを配置④各拠点のキャパシティ把握と設備の拡充によるキャパシティ拡大―の4点。
このうち、設備の拡充については、先月発表した取扱数量に合わせて保冷室容量を変化できるタイプの新型車両(4月28日付で既報)について、6月末までに57台、上期中にさらに164台を導入し、合計221台の導入を予定する。あわせてクールコンテナやコールドバック・シート、保冷台車を投入し、クールのキャパシティを、おおむね従前の5割増まで拡充する。
また、クール宅急便の大部分が食品関連であることから、全国に1690人いるエリア支店長(複数の小規模センターを統括する支店長)と品質指導長について、食品衛生責任者の資格取得を進めていく。
この5月後半から6月後半までの約1ヵ月間については、社内に蓄積されている膨大な過去データをもとに、最大で前年同期比10%程度の伸長があるものとして、各地域・拠点単位の到着量を予測。予測に従いクール設備の再配置を行うほか、予測を超える到着があった場合の対処策について、各拠点で事前にルールを決めておく。
実際に中元繁忙期に入る6月後半からは、発店所からの出荷実績データをもとに、翌日の容積ベースの到着量を各着店に先送りするシステムを稼働させ、着店での事前準備を行いやすくするとともに、キャパシティを超える到着が見込まれる場合は「警報リスト」を出力し、事前ルールに従った対応を促す。
さらに顧客への要請として①中元繁忙期のピークシフト②適正なサイズの計上―の2点を実施。大手百貨店や通販事業者は例年、6月中の注文を末日ごろにまとめて発送するため、7月1日および2日が到着のピークとなるケースが多く、実際昨年の7月2日は、平月の約3倍に当たる約120万個を取り扱っている。このためこうした大口荷主を対象にピークの分散を要請しており、おおむね理解を得られているという。
長尾常務執行役員は会見で、「荷主への要請は理解を得ながら進めていく。キャパシティの拡充を進めるとともに、ピークの山をずらすことで、荷受け制限などを行わなくてもすむよう体制を整備していく」と強調。
森岡室長は、「クール宅急便問題の原因は、各拠点の声に耳を傾けてこなかったことにある。機材の拡充や品質指導長の設置などを進めることで、品質を持続的に維持向上できる体制を構築していく」と述べた。
一方で田村品質指導長は、「自分の役割は会社と現場のパイプ役。現場の声から各種の具体的な品質改善策もあがってきており、作業員一人一人の意識も向上してきたと感じている」と語り、品質改善策が一定の効果を挙げているとの認識を示した。