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2014年5月19日付 2519号

7割の事業者が3月の輸送量前年比増、運賃上昇も3割に  全ト協が国交省の検討会で物流動向実態調査結果公表

 全日本トラック協会(星野良三会長)は12日開催された国土交通省の「第2回物流問題調査検討会」で、輸送量や運賃など物流動向に関する実態調査結果(速報版)を発表した。今年3月の輸送量が昨年3月、今年の2月に比べ増加したとする事業者が約7割、車両の稼働率も上昇したとする事業者が5割超に及んだ。また3月の運賃が上昇している事業者が約3割、4月の運賃が3月よりも上昇する見込みとした事業者が約2割いた。調査は4月22日から5月7日までの回答分482サンプルを集計した。

 3月の輸送量が昨年3月および今年2月と比べ、「増加」したとする事業者が27%、「やや増加」が41%だった。今年4月の見通しは3月と比較して「減少」「やや減少」とした事業者が約6割だった。

 車両の稼働率の動向については、3月は昨年3月および今年2月と比べ、「上昇」「やや上昇」とした事業者が5割超となった。4月の見通しは3月と比較し「下落」「やや下落」とした事業者がほぼ半数を占めた。稼働率が上昇した場合の対応では、「利用運送事業者に委託する」を挙げた事業者が68%、「運送依頼を断っている」42%、「求荷求車情報ネットワークを利用する」19%、「増車して対応する」16%と続く。

 運送依頼を断ったと回答した事業者の中で、輸送量増加や車両稼働率の上昇等により、運送依頼を断った実績については、今年3月は昨年3月と比較し、「増加」「やや増加」とした事業者が約8割に及び、今年2月との比較でも約6割いた。4月の見通しは3月と比較して「減少」「やや減少」とした事業者が約4割、「横ばい」とした事業者や「増加」「やや増加」とした事業者も約3割あった。

 運賃動向については、今年3月の運賃が昨年3月に対し上昇している事業者が約3割、4月の運賃が3月よりも上昇する見込みとした事業者も約2割いた。運賃動向は今年3月の実績、4月の見通しにおいても「横ばい」が最も多い。消費税の転嫁状況については、約9割の事業者が「税率引き上げ分を適正に転嫁できている」としたが、一部に転嫁拒否されている運送がある事業者もいた。消費税引き上げに伴い、約9割の事業者が「不利な条件等の押しつけはない」としているが、一部に「無償で付帯作業等、不利な取引条件を押しつけられた」とする事業者もあった。

 一方、今年3月のドライバーの不足感は、「非常に不足している」「やや不足している」とした事業者が約7割。4月の見通しもにおいても、引き続き不足する見込みの事業者が約6割だった。ドライバーの募集方法は、「ハローワークへの求人」が8割、「ドライバー仲間の紹介」5割、「新聞・雑誌等への広告掲載」4割と続く。

現中期経営計画のキーワードは「社員満足の向上」  木川ヤマトHD社長がヤマト運輸労組の研修会で講演

研修会で会社施策を説明する木川社長

 ヤマトホールディングスの木川眞社長は15日、ヤマト運輸労組主催の中央研修会で講演した。

 木川社長はその中で、クール宅急便の品質問題や、年度末の超繁忙期で現場が混乱したことについて、経営側の問題だったとして謝罪。「お客様の満足を向上させるためにも、現計画では社員満足の向上をキーワードとしていく」と語り、コミュニケーションがとれる風通しの良い職場環境を整備していく考えを示し、労組に協力を求めた。

 木川社長はまた、「バリュー・ネットワーキング」構想で掲げる各種のサービスについて解説しながらも、その基盤となるのが宅急便をはじめとする国内ネットワークであることを強調。主要都市間の当日配達をうたう「ゲートウェイ」についても、「当初のコンセプトは、取扱数量が増加しても運用可能なネットワークの構築だった。全てを当日配達するわけではなく、ニーズや料金も冷静に考えていかなければならない」と語り、現場に過重な負担がかからないよう配慮する姿勢もうかがわせた。

 一方、「構想の段階」としながら、荷主企業が各地の営業所を集約する中で、営業所の倉庫的機能を宅急便センターが代行する仕組みを検討していることを明らかにした。

 現在開発中の次期情報システムについては、現段階のイメージ動画をもとに、1つのタブレット端末で各種機能にアクセスする形となり、情報の双方向化を可能にするとともに、荷物より先に情報が着店所に届く内容と説明。社員の負担を削減しながら、利用者満足の向上を図っていく方向性を示した。

 中期経営計画の大きな柱の1つである国内での地域密着型の事業では、ここ数年で150の自治体との間で、災害支援や見守り、観光支援、商店街活性化などの案件を進めてきたと紹介。今後も「バリュー・ネットワーキング」構想と同様に、力を入れた取り組みを展開していく姿勢を強調した。

“ちゃんとやる”にこだわる 片山労組書記長

 講演を受けてヤマト運輸労組の片山康夫書記長は、総括として、「社員満足の向上を強調してもらったのはありがたい。労組も新しいチャレンジを受け止めなければならない」とする一方で、「会社がビジョンを示すのはいいが、労組はどうやったらそれが“ちゃんとできるか”にこだわりたい」と述べ、ビジョンを可能にするための施策を、強く求めていくとした。

 また、研修会のテーマである「約束」をとりあげ、「会社には、社会との約束、社員との約束、顧客との約束がある。約束が守れないようなら、やめるという決断も大事」とし、今後も現場の情報収集と交渉に力を入れていく姿勢をみせた。

今週掲載トピック一覧

  • ☆ウオッチ『中国の引越市場』
    ☆四文字『運転者不足の打開「妙案検討」』
    ☆道『ドルとオイルショックと車社会』(3)

  • ☆全流協が総会、事業計画に災害ロジスティクス体制構築など5つの目標設定
    ☆国交省が大型車の通行適正化方針示す、2倍以上の重量超過など悪質違反は即時告発
    ☆関西「国際物流戦略チーム」、6月に阪神港利用促進プロジェクトで活性化セミナー開催
    ☆日本フルハーフ、タイの車体製造・販売会社に資本参加
    ☆丸運・市原社長が会見、赤字要因解消し成長戦略推進へ
    ☆近鉄エクスプレス・石崎社長が会見、14年度は航空反転増目指す
    ☆SGムービング、女性のための引越「レディースムービング」発売
    ☆日立物流、ダノンジャパンとヤクルトが共同利用する館林物流センター来年2月開設へ
    ☆エコモ財団、荷主企業等対象にグリーン経営認証の「出前説明会」スタート
    ☆日通航空が「モバイルS-Printer」導入、場所を選ばず送り状発行
    ☆第一貨物と久留米運送、車両相互利用便2便体制に拡充
    ☆台湾日通、桃園市に2万7千平方メートル規模の新倉庫竣工
    ☆トナミHD・綿貫社長が会見、14年度は単価改善活動の継続やドライバー確保策の実施など行う
    ☆SGHD、スリランカの物流企業買収へ
    ☆JR貨物の石田会長が会見、「鉄道事業部門の黒字化は十分達成可能」
    ☆東ト協が第1回理事会、支部の内部組織化進める
    ☆日通・中村副社長が会見、国際関連事業売上高比率40%の達成目指す姿勢を強調
    ☆各社の14年3月期連結決算

今週のユソー編集室

  • ▼内閣府から先日、「選択する未来」委員会の中間整理案が公表された。現状の人口減少が招くさまざまなマイナス要因を予測し、これを回避するための方向性を示したものだ。
    ▼50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを基本に据え、オープンな国づくりで成長し続けることや、年齢・性別に関係なく意欲ある人が働ける制度構築などが掲げられている。
    ▼一口に1億人の維持というが、そのためには現状でおおむね1.4程度の合計特殊出生率を、2030年までに2.07へ回復させる必要があるという。それでも50年度後の労働力人口は現状より2割弱減少する。
    ▼こうしてみると、やはり物流業界の未来像は厳しいと言わざるを得ない。政府が対策に動くのは当然としても、各企業や業界全体でも何かできることはないか、全力で模索したい。整理案が述べているとおり、「残された時間は多くない」が、「未来は変えられる」はずだ。

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