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2013年7月1日付 2480号

5次目の総合物流施策大綱を閣議決定ー全体最適物流の実現へ工程表作成し進捗管理  政府

 政府は6月25日、5次目となる「総合物流施策大綱(2013~2017)」を閣議決定した。「強い経済の再生と成長を支える物流システムの構築~国内外でムリ・ムダ・ムラのない全体最適な物流の実現~」を目標に、①企業のグローバル・サプライチェーンを支える物流②環境負荷の少ない物流③災害対策に強い物流―の実現を目指し、2017年度に向け物流施策の総合的・一体的な推進を図る。
 今後の物流施策について、「産業活動と国民生活を支える効率的な物流の実現の取組」「さらなる環境負荷の低減に向けた取組」「安全・安心の確保に向けた取組」という3つの方向性を示した。

 産業活動と国民生活を支える効率的な物流の実現では、わが国物流システムのアジア圏への展開を図るため、アジア各国との政策対話による海外展開のための環境整備や、NEAL―NET(北東アジア物流情報サービスネットワーク)の展開などに取り組む。またグローバル・サプライチェーンの一端を担うわが国の国際物流ネットワークの国際競争力強化のため、船舶大型化に対応した港湾機能の強化や国際海上コンテナターミナル積載車両の通行支障解消など物流インフラの整備や有効活用を図っていく。また荷主・物流事業者連携による物流効率化や事業の構造改善に取り組む。

 環境負荷低減に向けては、鉄道・内航海運の輸送力強化とモーダルシフトやトラック等の省エネ化を推進する。

 安全・安心の確保に向けては、物流における災害対策として、被災者に支援物資を確実に届けるための体制・システム整備や、道路・港湾等の地震・津波対策の推進などに取り組む。45フィートコンテナ積載車両等が通行すべき経路を指定し望ましい経路を通行するよう誘導、適正な道路利用を促進し、社会資本の適切な維持管理・利用を図っていく。
 またAEO事業者の輸出入手続きの簡素化推進などセキュリティ確保と物流効率化の両立に取り組む。そして輸送の安全・保安確保を図り、信頼性の高い物流システムを構築していく。

 こうした施策は今後、関係省庁による推進会議を設置し、連携・協働を一層強め推進していく。来年度予算概算要求に間に合うよう7月中には推進会議を開催し具体的な物流施策のプログラムをまとめていく。ここでは中長期的な見通しのもと目標を設定し、その達成に向けた工程表を今回初めて作成していくこととしている。その上で、毎年度取り組みの実施状況を検証し、結果を公表。また必要に応じて見直しなど、計画・実行・評価・改善を繰り消し改善するPDCA方式で進捗(しんちょく)管理を適切に行っていく。さらに経済や物流状況の大きな変化の場合、必要に応じて大綱を改訂していく。

中谷新社長が会見、「今後の目指す方向は世界で勝てるプレイヤー」  日立物流

 日立物流は6月27日、東京・江東区の同本社ビルで中谷康夫新社長の社長就任会見を開いた。
 会見には26日付で新社長に就任した中谷康夫社長と鈴木登夫会長が出席。中谷新社長は今後の日立物流が向かう方向として「世界で勝てるグローバルメジャープレイヤー」を掲げるとともに、3PL、重量機工、フォワーディング部門の競争力を高めていくことなど、各種経営戦略を示した。

 会見で中谷社長は「当社は鈴木前社長の時代に、グローバルの拡大やM&Aの活用などで大きく成長した」とした上で「これからの日立物流がどこに向かうかというと、それは『世界で勝てるグローバルメジャープレイヤー』。日本の市場での地位はキチンと築いた上で海外でも十分に日立物流の存在感を示したい」と今後の方向性を示した。

 目標実現のための今後の重点取り組み方針に関して中谷社長は「今後のさらなる成長実現のため従業員に話していることが3点ある。1つはスマートロジスティクスを構成するコア事業である3PL、重量機工、フォワーディングの競争力をさらに高めるよう努力すること。2つ目はグループ内の物流周辺に関係している会社、例えばソフトウェアをやっている会社などを含めて物流の新しいビジネスモデルを構築すること。そして3つ目は国内外の新しい市場に出て行くこと。国内ではやりきれていないインダストリーに携わり、海外では新興国で仕事をいち早く立ち上げていきたい」と述べた。その他、M&Aは今後も案件に応じて推進する方向を継続するとともに、海外進出についてはカンボジアやトルコ、ブラジルなどについて言及し、今後検討するとした。

今週掲載トピック一覧

  • ☆これだけは知っておきたいアジア進出の落とし穴③『インドネシア』
    ☆四文字熟語『採算性の確保「高速料金」』
    ☆道『規制緩和時代の幕開け⑪』

  • ☆高速の大口割引等は基本的に継続方針、社整審国土幹線道路部会が中間答申
    ☆首都圏キット利用協組、通常総会で2013年度事業計画まとめる-研修や交流会の実施など
    ☆国交省、国際港湾周辺の物流施設再整備への補助-8月下旬から公募予定
    ☆国交省・関係省庁課長級会議、 トラックの社会保険等未加入は処分強化等で減少
    ☆公取委が全流協からの相談に回答、緊急物資共同一括受注は独禁法上問題ない
    ☆国交省が1日付で組織改正、物流審議官に加藤海事局次長
    ☆ヤマトシステム開発、スマホの専用アプリでチェーンストア向け集客支援サービス
    ☆日立物流が香港の物流会社CDS社株式譲受
    ☆日タが株主総会で新社長に河島氏選任、2012年度の業績は税負担減で純益増
    ☆住友倉庫、サウジアラビアに倉庫を竣工
    ☆ 物流連が通常総会を開催、川合新会長が抱負「会員拡大へ意欲」
    ☆エコモ財団、グリーン経営認証のリーダー研修会開催

今週のユソー編集室

  • ▼政府は6月25日、「総合物流施策大綱(2013―2017)」を閣議決定した。初の大綱が策定されたのは1997年のこと。それから16年が経過し、今回の大綱は5つ目になる。
    ▼大綱を眺めると、作成者の危機感のようなものを感じる。東日本大震災を経て、物流における災害対策が柱の1つに加えられた。これまでの大綱にもその視点はあったが、今回のようにオペレーションにまで言及した計画が策定されたのは初めてだ。
    ▼同じく初めてとなるのが、目標達成に向けた工程表の作成だ。PDCAによる進捗(しんちょく)管理とあわせ、施策実現に向けた強い意欲の表れと受け止めたい。
    ▼国際物流の強化は、初回から今回まで一貫して取りあげられているが、その道のりはいまだ半ばだ。災害対策でも同様のスピード感では、救えたはずの命が救えなかったという事態につながりかねない。冒頭感じた危機感とは、そこからきているのかもしれない。

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