共同配送と震災時の相互協力で業務提携 セイノーHDと福通
セイノーホールディング(田口義隆社長)と福山通運(小丸成洋社長)は12日、共同一括配送や大規模災害時の相互協力を盛り込んだ業務提携に基本合意、同日両社長が都内で記者会見を行い、提携を通じた名門特積み事業者同士の新たな関係や業界の今後の方向性などについて語った。
会見で田口社長は、今回の提携を「業界の今後の方向性を示すファーストステップ」とした上で、きっかけは東日本大震災だったと説明。全国にインフラを有するトラック事業者としての使命をより高い次元で果たすため「小利を捨てて」同じ考えを持つ小丸社長と手を組む決断をしたと述べ、災害時の迅速な輸送サービス提供や輸送効率化により「国を支えるベクトル」が働くとの考えを強調した。
一方の小丸社長は、トラック業界は規制緩和により過当競争に陥るなか、さらなる労務改善や安全・環境対策などが求められていると説明した上で、「地域社会、業界、客のために何ができるかを考えた」とし、今回の提携がさらなる地域社会への貢献や企業価値向上につながるとの期待感を示した。また、今後のトラック業界の方向性について問われた小丸社長は、特積み事業者は現在280社あるが、生き残りのためにはさらなる輸送効率向上が必要で、同業者間の提携は不可避であるとの考えを強調。「きのうまでの敵と、きょうは握手をする」時代にあるとの認識を示した。
田口社長は、「ポイントは全体効率。これまで業界は独自最適を求めてきたが、今後はインフラの効率的な活用が必要で、“効率よく、災害に強い”体制を整える必要がある」とした。一方、資本提携などより深い提携関係の可能性については現段階では明言を避けた。
共同一括配送は、「エコデリバリー」として、同一の配送先を集約。荷受け作業軽減や通い容器回収の効率を高めることなどにより、大口配送における効率性向上を図る。「大規模災害発生時等における相互協力に関する協定書」には、①被災地域での物流施設提供②作業人員応援③燃料インタンクの共同利用④被災従業員への社宅提供⑤災害情報・道路情報の共有⑥従業員の安全・安心の確保⑦防災訓練の共同実施-を盛り込んでいる。
両社の勢力合計は1011拠点、社員数4万4631人、車両数4万407台に上る。また、インタンクは、両社で全国340ヵ所、常時7800キロリットルが貯蔵されていることから、提携により非常時の燃料確保に関するバックアップが大幅に高まるものと期待される。