物流・輸送の専門紙、輸送新聞はこれからも輸送産業の発展に貢献してまいります。

文字サイズ

2013年3月18日付 2466号

共同配送と震災時の相互協力で業務提携  セイノーHDと福通

 セイノーホールディング(田口義隆社長)と福山通運(小丸成洋社長)は12日、共同一括配送や大規模災害時の相互協力を盛り込んだ業務提携に基本合意、同日両社長が都内で記者会見を行い、提携を通じた名門特積み事業者同士の新たな関係や業界の今後の方向性などについて語った。

 会見で田口社長は、今回の提携を「業界の今後の方向性を示すファーストステップ」とした上で、きっかけは東日本大震災だったと説明。全国にインフラを有するトラック事業者としての使命をより高い次元で果たすため「小利を捨てて」同じ考えを持つ小丸社長と手を組む決断をしたと述べ、災害時の迅速な輸送サービス提供や輸送効率化により「国を支えるベクトル」が働くとの考えを強調した。

 一方の小丸社長は、トラック業界は規制緩和により過当競争に陥るなか、さらなる労務改善や安全・環境対策などが求められていると説明した上で、「地域社会、業界、客のために何ができるかを考えた」とし、今回の提携がさらなる地域社会への貢献や企業価値向上につながるとの期待感を示した。また、今後のトラック業界の方向性について問われた小丸社長は、特積み事業者は現在280社あるが、生き残りのためにはさらなる輸送効率向上が必要で、同業者間の提携は不可避であるとの考えを強調。「きのうまでの敵と、きょうは握手をする」時代にあるとの認識を示した。

 田口社長は、「ポイントは全体効率。これまで業界は独自最適を求めてきたが、今後はインフラの効率的な活用が必要で、“効率よく、災害に強い”体制を整える必要がある」とした。一方、資本提携などより深い提携関係の可能性については現段階では明言を避けた。

 共同一括配送は、「エコデリバリー」として、同一の配送先を集約。荷受け作業軽減や通い容器回収の効率を高めることなどにより、大口配送における効率性向上を図る。「大規模災害発生時等における相互協力に関する協定書」には、①被災地域での物流施設提供②作業人員応援③燃料インタンクの共同利用④被災従業員への社宅提供⑤災害情報・道路情報の共有⑥従業員の安全・安心の確保⑦防災訓練の共同実施-を盛り込んでいる。

 両社の勢力合計は1011拠点、社員数4万4631人、車両数4万407台に上る。また、インタンクは、両社で全国340ヵ所、常時7800キロリットルが貯蔵されていることから、提携により非常時の燃料確保に関するバックアップが大幅に高まるものと期待される。

全ト協が高速料金さらなる引き下げや燃油高騰対策補助金の創設など要望 自民党トラック議連総会で

 自民党トラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)の総会が14日、東京・新橋の第一ホテル東京で開催され、全ト協は燃料高騰、高速道路料金、消費税転嫁等の問題について要望した。これを受けて同議連では燃料高騰対策補助金等の創設、燃料高騰分の価格転嫁策拡充、高速道路通行料金のさらなる引き下げなど7項目を盛り込んだ決議を採択した。政権交代により、3年3ヵ月ぶりに自民トラック議連議員と各ト協代表との意見交換の場が実現したことになる。

 冒頭、国会開会中のため、細田会長に代わってあいさつした木村太郎同議連幹事長は、要望に対し全力で取り組んでいきたいと語った。次いで星野全ト協会長があいさつし、アベノミクスで国内景気は明るい気分になっているものの、円安による石油高騰で大変苦労しているとして、苦境打開を強く訴えた。

 小幡全ト協税制対策委員長が次の要望事項について説明、その実現方を求めた。
 〈軽油高騰問題〉
 1、国民生活に必要なトラック輸送サービスを維持するための燃料高騰対策補助金等の創設。
 2、燃料高騰分の価格転嫁のための対策拡充=①燃料サーチャージ導入促進策の一層の推進②燃料サーチャージ導入に係る荷主の協力を確実なものとするための荷主関係団体への強力な要請。
 3、エネルギー価格対策の強化=①軽油の価格監視の徹底②安価な備蓄原油の早期放出等の抜本的対策の実施。
 4、軽油引取税の旧暫定税率の廃止または一時凍結。
 〈高速道路問題〉
 1、終日基本料金の半額化と大口多頻度割引拡充により70%割引に。
 2、本州四国連絡高速道路の料金体系をNEXCOと一体的なものに。
 〈消費税問題〉
 ◎消費税転嫁特例法案で転嫁・表示カルテルを独禁法の適用除外としていただいたことに感謝、トラック協会においても対応していきたい。
 ◎全ての取引を「消費税の転嫁拒否行為の是正に関する特別措置」の対象に。
 ◎転嫁拒否等行為の取り締まりなど、公正取引委員会はじめ関係省庁が緊密な連携を図り、迅速な実効性のある対応を。
 〈その他事項〉
 1、大型トラックは、乗用車に比べ価格上昇が続くなか、これ以上の環境基準・安全基準の強化は見送りとし、車両価格3程度引き下げのためのアクションプランの策定・実行を。
 2、北海道~本州などフェリー等の利用に対する補助・助成の創設を。

 国土交通省自動車局長、道路局長ら関係省庁からの要望への対応状況報告を経て意見交換に入った。この中では、要望に盛り込まれた事項のほか、燃料コストが40%近くを占めるという長距離トラック輸送への補助等や、現在実施されているアクアライン割引措置の継続といった要望も出された。
 
 この後、細田会長があいさつし、公取が中小零細企業の苦衷を察して実態に合った独禁法の運用を行うよう、責任を持ってしっかりと監督していきたいと述べるともに、燃料高騰、高速道路、消費税問題など皆さんと緊密な連絡、意見交換を行って全議員が一丸となって歩んでいきたいと語った。

 要望を受け、各議員から意見等が表明され、赤澤亮正議連事務局長が次の7項目を掲げた決議文を読み上げ採択した。◎トラック運送業界に対する燃料高騰対策補助金等の創設◎燃料高騰分の価格転嫁策の拡充◎軽油の価格監視の徹底◎軽油引取税の旧暫定税率の廃止または一時凍結◎自動車重量税の廃止◎高速道路等通行料金のさらなる引き下げ◎北海道~本州等のフェリー等の利用に対する補助・助成の創設。

 最後に坂本道路運送経営研究会会長のあいさつ、全員でのガンバローコールで閉会した。

今週掲載トピック一覧

  • ☆国交省、大型ディーゼルトラックの100万円補助申請が予算の半分に達する
    ☆千葉ト協が適正化評議委開催、D・E評価の割合が前年比で大幅減少
    ☆国交省、運行管理者の完全不在は一発事業停止など処分強化の方針でパブコメ募集
    ☆楽天、エコ配と資本・業務提携で物流ネットワーク整備へ
    ☆春闘妥結状況、運輸労連大手で妥結出始める-内容は例年並み
    ☆日貨協連、理事会で25年度事業計画案を承認-7つ目の常任委員会として燃料対策委を新設
    ☆東京都とTCGFが災害時の物資調達協定締結
    ☆国交省、災害時の民間物資拠点全国934施設をリストアップ-物流システム構築取り組み状況を公表
    ☆全ト協、理事会開催し25年度事業計画決める-規制緩和見直し推進など再重点施策に
    ☆全ト協・日貨協連、2月のWebKIT確報発表-荷物情報10ヵ月連続で前年上回る
    ☆帝国データ、2月景気動向調査発表-今後の国内景気はゆるやかな回復に
    ☆味の素グループ、仙台センター来年2月稼働予定
    ☆住友ゴム、公開燃費テスト実施-エナセーブSP688は従来品に比べ燃費13%向上
    ☆千葉ト協、トラック協会の役割と課題をテーマに物流セミナー開催
    ☆日立物流、被災地の復興支援へ従業員派遣し支援
    ☆東ト協輸送委、駐車取り締まり問題で来年度も調査実施へ
    ☆セイノーHDの「あしたラボ」、大学院で学んだ社員講師に競争力の必要性を講義
    ☆久留米運送、さいたま店を移転開業-ホーム面積約3倍に
    ☆日通、東京~九州瀬戸内航路で4月から松山寄港
    ☆物流連・JILS、企業間連携による物流効率化の研究会開催-4件の事例を紹介
    ☆中環審自動車排ガス専門委、排ガス後処理装置の検討会が中間報告行う
    ☆関運局、モーダルシフトの推進等25年度重点施策案のパブコメ募集
    ☆ヤマト運輸、相模原市の大型商業施設の館内配送業務を受託
    ☆東ト協、理事会・常任理事会開く-一般社団法人移行を踏まえた事業計画案を承認
    ☆首都直下地震発生時の支援物資物流協議会、組織・拠点のあり方など基本方針まとめる

今週のユソー編集室

  • ▼16日に行われたJR貨物のダイヤ改正に伴い、吹田貨物ターミナル駅が開業した。梅田駅の機能分割が決まってから実に四半世紀が経過し、同社にとってはまさに悲願といえる新駅の誕生だ。
    ▼ここまで開業が遅れた理由は、地元住民との合意形成を慎重に進めてきたからだ。かつて“東洋一の規模”とうたわれた吹田操車場。往時の騒音等を知る人達が、その後信号場を経て新駅に至る計画に拒否反応を示したとしても不思議はない。
    ▼残念なのは、そうした苦難を乗り越えてできた駅であるにもかかわらず、利用運送事業者から「使いづらい」との声があがっていること。狭く長い専用道路、1日千台の台数制限、駅構内の倉庫の賃貸料が高いという指摘もある。
    ▼ともあれ新駅は動き出した。開業式での田村JR貨物社長、井上吹田市長のあいさつにあったとおり、「まごころ満載」で「近隣住民に愛される」駅になってほしいと切に願うばかりである。

戻る